弐
□第五十節
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「予定だとそろそろなのか?」
「ええ、あと十日くらいではないでしょうか」
私の返事に一さんは優しい笑みを浮かべる。
かなり大きくなったお腹を眺めながら思わず私も同じような笑みが浮かぶ。
「どちらが生まれるか楽しみだな」
「そうですね。男でも女でも一さんのように思慮深く仲間想いな子に育ってくれると嬉しいですね」
「俺は瑠依に似て優しく芯のしっかりとした子に育って欲しい」
そんな願いを込めて二人でお腹に手を添える。
一さんの温かい手に反応するようにお腹を蹴る我が子は、どうやら今から元気いっぱいらしい。
「そういえば名前は考えたのですか?」
「ああ、どちらでもいいように考えている。生まれてからのお楽しみだ」
「きっと一さんが考えた名前だから素敵でしょうね」
土方さんや風間さんに意見を聞きながら毎日頭を悩ませていたのは知っている。
二人に聞いても内緒の一言で私には教えてくれなかったが、きっと悪い名ではないはずだ。
「そろそろ買い物に行かないと」
「一緒に行く」
「平気ですよ」
「非番でいる日くらい荷物持ちをする。身重の妻を一人で出歩かせる訳にはいかない」
随分大切にされてしまっているものだ。
ご近所の方が一さんは良き夫だというのがよく分かる。
お言葉に甘えて一緒に買い物へと向かった。