黄昏色の籠囲い
□第一話
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柔らかな風が吹き、美しい黒髪が舞い上がる。
そんな髪を押さえながら、気高き天使長は小さく微笑んだ。
「もうすぐ来るか」
―天使長と少女と少年―
「ルシファー」
鈴の鳴る様な声に、ルシファーは振り返る。
そこには薄紅の髪を自由に舞わせる天使、セレイアが立っていた。
「こんな所にいたの。探し回っちゃったじゃん」
腰に手を当てながらセレイアはルシファーに文句を言う。
「悪かった」
少年天使であるセレイアの、まだまだ幼さの残るその行動に、ルシファーは笑みを隠しながら謝る。
「別に構わないけど…」
少しそっぽを向いてセレイアは言う。
そんな少女の姿をルシファーは微笑ましそうに見た。
「今日はどうした?随分慌てていたが」
「あ!あのね、ゼウス様にルシファーを呼んで来いって言われたの」
用件を思い出したのか、手を叩きながらセレイアは告げる。
「私を呼ぶのにセレイアを使うとは…」
妙な頭痛に襲われながらルシファーは呟く。
天使長であるルシファーに対等に物を言うセレイア。
本来なら許される事ではないのだろうが、ルシファー本人がそれを気にしていない。
そしてゼウスをからかったりもする彼が、唯一に近く逆らえず籠愛している少女。