連載番外
□夜半の秘め事
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「土方さん、まだお仕事ですか?」
「ん?いや…する事はあるんだが…」
夜も深くなった頃、たまたま廊下で会った瑠依にそう答える。
俺の含みのある言い方に瑠依は首をひねっている。
「ああ、そうだ。まだ寝ないなら少し付き合わないか?」
「はい、構いませんが」
「俺の部屋で待っててくれ。茶でも淹れてくる」
「え?私がしますよ!」
「いいから待ってろ」
困惑する瑠依の背中を押して部屋に向かわせる。
簡単に茶を用意して部屋に行くと、瑠依が所在なさげに座っていた。
「待たせた」
「いえ。それよりお仕事中だったのでは」
「これはあれだ…」
文机の上に広がった紙を見ながら答えに詰まる。
しかし不思議そうな表情をする瑠依を見て腹をくくるように口を開く。
「日野の姉に書こうとしていた文だ」
「そうだったんですね」
「瑠依に言われたからな。やっと書く気になったんだが、何を書いていいやら」
何をどう書いても心配させそうで筆が遅々として進まない。
それを聞いて瑠依は小さく笑みを漏らした。
「素直なご活躍をお書きになられれば、きっとお姉様も喜ばれますよ」
「そんなもんか」
「可愛い弟からの文なら内容よりも届いた事が嬉しいと思います」
「やっぱり新選組の姉上には敵わねぇ」
「もう」
つんと顔を背けて瑠依は茶を飲む。
随分と子供っぽい仕草にもう少し遊んでみたくなる。