連載番外
□君の涙拭う手に
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知らぬ間に屯所に足が向かう中で暗い裏道に現れたのは、瑠依を抱えた天霧だった。
「何故あんたが瑠依を連れている」
「新選組を抜けた君には、私が新選組に何をしようと関係ないと思うが?」
顔色一つ変えずに天霧は言い放つ。
「新選組に何をしたかでなく、彼女を連れている事が問題なんだ」
そう言って居合で刀を抜き放つと、天霧は瑠依を抱えたまま後ろに飛び下がる。
恐怖でしっかりとしがみつく瑠依がいるとは思えない動きだ。
「彼女まで斬るつもりですか?」
「そいつが死のうと俺には関係のない事だ」
飄々と言う天霧に刀の切っ先を向けたまま返す。
瑠依を抱えたまま俺に向かって来るとは思えないが、万が一を考えて神経を集中させる。
僅かに空気が止まった次の瞬間、天霧が苦笑を漏らした。
そして瑠依を地面に座らせて微笑む。
「瑠依さん、怖い思いをさせましたね」
「あ…」
そっと瑠依の頭を撫でて俺達に背を向ける。
深追いする気もなく、その背が闇に消えるのを見送った。