蒼穹より君の元へ
□血は争えないというやつ
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「頼子、少しいいかしら」
襖越しに掛けられる控え目な声。
警戒する彼らに苦笑を漏らしながら答える。
「どうぞ」
「急にごめんなさいね」
そこに立っていたのは何やら布を抱えた朔。
それを見て私も守護聖ズもきょとんとする。
「朔、その山の様な反物はどうしたの?」
「これで皆の着物を作ろうと思って」
ニコニコ笑顔で朔は部屋に反物を広げた。
「なかなか手触りの良い布だな」
反物に埋もれそうになりながら、ジュリアスが品評する。
貴族らしいジュリアスが認めるんだから、さすがは戦奉行のお家ですね。
「うむ…」
完全にそれにくるまって寝ようとしているクラヴィス。
ここまで怠惰的だと、いっそ凄いと思う。
「朔さんがこれで私達の服を作るのですか?」
「ええ。貴方達の大きさなら沢山作れるわ」
本当に楽しそうな表情の朔。
景時さんもそうだけど、何か作るってなった時のこの兄妹の笑顔は眩しいものだ。
「私の時もそうだったな…」
自分がここに来た時の事を思い出し、ちょっとだけ可哀想に思った。
「ジュリアス殿は白、クラヴィス殿は黒よね。ルヴァ殿は…」
今の服色から反物を選んでいく朔。
だけどルヴァのところでピタリと止まった。
「これじゃない?」
そう言って松葉色の反物を差し出す。