黄昏色の籠囲い
□第三話
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「ねーゼウス様。最近ルシファーが冷たいの」
神殿に訪れていたセレイアは玉座に座りながら、ゼウスにそんな愚痴を言っていた。
「珍しい事があるものだな。セレイアにだけは昔から甘いルシファーが」
「なんか寂しい…」
足を揺らしながらセレイアは呟く。
その悲しそうに俯いた彼女の頭をゼウスは優しく撫でた。
「何かルシファーも思うところがあるのだろう。暫くすれば元に戻る」
「…うん」
セレイアが頷いて顔を上げると同時に、玉座の間の扉が荒々しく開いた。
「何事だ!」
「ル、ルシファー様がゼウス様に反旗を…!」
飛び込んできた天使は震える声で告げた。
それにいち早く反応したのはセレイアだった。
「何かの間違いでしょ!ルシファーがゼウス様にそんな事…」
「セレイア落ち着け」
今にも掴みかからんばかりのセレイアをゼウスは制する。
「お前はここにいろ。ここならば何があっても安全だ」
「ゼウス様…!」
反抗しようとするセレイアをそっと眠らせて、ゼウスは玉座の奥の間に連れていった。
「セレイアを見ていろ。何があってもそこから出すな」
「はい」
そう命令を残してゼウスは玉座の間を後にした。
そしてその後の出来事は、天界の歴史を揺るがす事件として刻まれた。