黄昏色の籠囲い

□第三話
2ページ/5ページ


「ねーゼウス様。最近ルシファーが冷たいの」


神殿に訪れていたセレイアは玉座に座りながら、ゼウスにそんな愚痴を言っていた。


「珍しい事があるものだな。セレイアにだけは昔から甘いルシファーが」

「なんか寂しい…」


足を揺らしながらセレイアは呟く。
その悲しそうに俯いた彼女の頭をゼウスは優しく撫でた。


「何かルシファーも思うところがあるのだろう。暫くすれば元に戻る」

「…うん」


セレイアが頷いて顔を上げると同時に、玉座の間の扉が荒々しく開いた。


「何事だ!」

「ル、ルシファー様がゼウス様に反旗を…!」


飛び込んできた天使は震える声で告げた。
それにいち早く反応したのはセレイアだった。


「何かの間違いでしょ!ルシファーがゼウス様にそんな事…」

「セレイア落ち着け」


今にも掴みかからんばかりのセレイアをゼウスは制する。


「お前はここにいろ。ここならば何があっても安全だ」

「ゼウス様…!」


反抗しようとするセレイアをそっと眠らせて、ゼウスは玉座の奥の間に連れていった。


「セレイアを見ていろ。何があってもそこから出すな」

「はい」


そう命令を残してゼウスは玉座の間を後にした。
そしてその後の出来事は、天界の歴史を揺るがす事件として刻まれた。
 
 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ