ノベル

□*second love
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「それじゃあ、エリー。ちょっと寄ってみただけだから」
 そう言ってノルディスはエリーに微笑みかけた。
「うん。ありがとう。またね」

 バタンと閉まるドアの音が聞こえたと同時に、エリーの背後でため息が聞こえた。
「いいかげんにしなよ、エリー」
「え?」
 振り向くと、机に頬杖をついた呆れ顔の女性がいる。
 マリーだ。
 彼女、マリーことマルローネは、ケントニスでエリーと再会した後、より高度な錬金術の高みを目指す為、ここザールブルグでエリーと二人、工房を開くことにしたのだ。
 マリーはエリーの先輩であり、命を救ってくれた大恩人なのだが…
 二人で暮らす、ということは結構すれ違いや行き違いもあり、些細なことで喧嘩をしてしまうこともよくあった。
「どういうことですか?」
 今日のマリーは少々機嫌が悪い。それを知っているエリーは、彼女の言葉になるべくやんわり返す。
「どういうことって…本当に分かんないの?」
 マリーは驚いた表情で立ち上がった。
「彼よ、さっきの。あんた達どうなってるのって言ってんのよ」
「マリーさん…」
 何となく分かってはいたが、またその話か、と少々うんざりした。
 以前にもノルディスとのことでからかわれたことがあるのだ。
「何度も言ってるように、私とノルディスはただの友達です!」
「じゃあ、彼の気持ちはどうなのよ」
「え?…」
 ノルディスの…気持ち?
「そ…れは、もちろん、ノルディスも…」
「確かめたことあるの?」
「…ないですけど」
今日はやけにつっかかるなあ、と思いながらマリーを見上げると、彼女は察したかのようにふいっと顔を背けた。
「さっきの彼、『ちょっと寄っただけ』って言ってたけど、あんなにしょっちゅう来てるんだから、嘘にきまってるじゃない。あんたに気を使わせない為にわざと言ってるのよ」
「………」
「そりゃあ、当人だから分からないかもしれないけど、はっきりさせてあげなきゃ可哀想だよ」
「はっきりって…私は別に」
 告白されたわけでもないし、という言葉を飲み込む。
「あの、ダグラスっていう聖騎士か、ノルディスか。それだけでもはっきりさせるべきだよ。」
 マリーはそれだけ言うと、二階へ上がって行ってしまった。
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