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□その後の話。
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「…ロマンティシズムも結構だが、あんまり馬鹿な真似すんなよ」

柔らかな猫っ毛を撫でるとくぐもった笑い声がして、ちらりと膝にすりつけるように伏せていた顔が上がって、悪童みたいな目が覗いた。

「そーのロマンティシズムに付き合って隊動員させてくれちゃった人が何を言うかなぁー」
「総悟が隊服のまま行っちまうからだ、あの馬鹿…てめぇと関わると、本当に馬鹿が感染って困るんだよ。撒き散らすな、病原体」
「馬鹿って言う方が馬鹿って知ってる?」

にまにま笑う顔が腹立たしい。先刻までのたうちまわっていたくせに。魂だとか、数刻前にほざいていたときとは別人みたいだ。

未だ計りきれない。計りきれなくて良いと思う。いちいち本気にしていたら、こっちの身が持たない。話半分で聞いておいたほうがいいのだ。

「いーよ、多串君が馬鹿になって、仕事できないって言ったら嫁にして責任取るから」

むしろ馬鹿になって頂戴。

にへらと笑って言われた。折角悟りの境地に達しかけていた思考が世界新記録を更新して現実に戻ってくる。悔しかったので無防備に晒された脇腹を思い切り掴んでやった。誰が嫁になんてなってやるか!

「――――――…ッ!!!!」

痛みのあまり声も出ず丸まって痙攣を繰り返す姿に笑って、煙草に火をつけた。快勝だ。怪我人相手じゃないと勝てないというのは情けないが、馬鹿話でなんて一生勝てなくてもいいのだ。
そもそも自分を嫁に貰うなんて言い出すヤツと張り合っても仕方が無い。……反射的に口が出てしまうのだけれど!

「お二人さん、どーでもいいんですが、ここが屯所だって分かってますかィ?」

にっこり不気味なくらいに笑った総悟と、何故か男泣きしている山崎以下殺気だった隊士たちが乱入するのは数秒後のことである。

END
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