隠れ家

□blue bird 2
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「俺のもんに何勝手に触ってやがんだ、万斉」
「減るものでもあるまい」
「減るんだよ。だからさっさと離しやがれ。……十四郎、」

相変わらずの無茶苦茶な主張にしぶしぶと万斉が土方の手を離したのを確認すると、高杉は軽く手を広げて、にやりと笑った。


「おかえり」


それだけでガラリとその場の空気は変わってしまった。
ああ、と頷いた土方は無造作に足を進める。前を塞いでいた男たちは呆気に取られたまま、左右に分かれて土方に道を提供した。
その背後を護るように万斉が続く。
甲板に上がり伸べられた手を捕まえると、高杉はふうと唇を吊り上げて、それから土方を抱きこみ口付ける。

それを見てまで口を挟もうとするようなつわものは、その場には存在しなかった。


+++



船内に入った真撰組元副長に、たちまちま鬼兵隊は大騒ぎになった。だが突っかかってこようとするものは誰一人としてない。ぎょっとしたように目を剥いて、そして土方の手を掴んで離さない高杉の腕に気がつくと、呆然としたまま立ち尽くすばかりだ。

「連絡はしただろうが。斬られるかと思ったぜ」
「その刀じゃ何も出来ねェしな」

ちゃんと説明しておけよ、と横目でそんな男たちを眺めぼやく土方にクツクツと笑って高杉は船室に案内した。高杉が使っている部屋であるらしい。調度もなにもかも一級品であるようだが、それでも殺風景な部屋だと土方は思った。この男は自分のことに関しては誰より無関心だ。
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