+++インソムニア+++
□逃。
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「出来心だったんでスゥウ!!」
「万引きやらかしたガキの言い訳かァア!!」
ちょっと触れただけだったんです。唇で。
…嘘です。ごめんなさい。ちょっと舌入れました。酒の味でしょうか。やっぱり少し甘くて美味しかったです。
我に返った瞬間、もう此れ以上なく広がった瞳孔があったわけですが!!
「土方さん、朝っぱらからそんなに裾めくり上げて走るなんて、他のヤツらが仕事にならなくて困ってやすぜ」
「総悟…ッ」
背後に声が加わりました。沖田隊長です。振り向くのが怖くて見てませんが、さんざ屯所の中を走り回ったおかげで副長の格好は素晴らしいことになっているはずです。あれを見てマトモに仕事が出来る人間なんてここじゃ局長と沖田隊長くらいしかいません。二人とも見慣れてる上に局長は超鈍感だからですが!
「山崎も必死で謝ってんだし、『これ』で許してやりなせぇ」
俺の頭はとうとうおかしくなったのでしょうか。沖田隊長にかばわれる日が来るなんて思っても見ませんでした。沖田隊長が外見どおりの天使に思えます。今なら後光まで見えそうです。
「あり……ッ!!??」
がとうございます、とは続けられませんでした。
振り返った先、垂涎物の副長の隣で沖田隊長はそりゃあもう、爽やかな顔で。
先刻の俺の爽やかさが嘘みたいな爽やかな顔で笑ってました。
肩口になんだか物騒なものが見えます。討ち入りの時とかに良く見るアレです。
沖田隊長愛用の!!
『これ』って、『これ』って…バズーカーですかぁッ!!??
「ッ、ギャアアア……ッ!!」
ああ。
今日俺はどれだけ寿命を縮めたんでしょう。容赦なく引かれた銃爪に涙で目の前が見えません。
というか、今日が命日になりそうです。
皆様、どうか先立つ不幸をお許しください―――。
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死んでません(笑)アフロにはなりましたが。