+++インソムニア+++

□禁じられた遊び 後日談
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慣れない書類も、やってみれば中々楽しい…ということはなく、こうしていつまで経っても埋まらない書類を前に、うんうん唸る羽目になっているというわけであった。

「あ、あの、沖田隊長も恋とか、するんですね」
「俺が恋しちゃいけねェってのかィ」
「いや、そういうわけじゃないんですけどっ……あ、あの、一体どういうひとかなって…」

どうやら山崎の好奇心は、恐怖に打ち勝ったらしい。
とうとう文机に突っ伏してしまった沖田は、胡乱げに、つれねェ人でさァ、と呟いた。

「美人で仕事のできる年上の、すげェ勝気な人なんだがねィ。それでいて、鈍いのがたまに傷で、おまけに随分と後ろ向きな解釈ばっかりしてくれやがるんでィ」

これでは全く、愚痴だ。
沖田は口角を吊り上げて自嘲する。これでは責任を、土方に押し付けているだけではないか。
山崎は目を丸くして、まじまじと沖田を見やると、おずおずと口を開いた。

「難しい人、なんですね」
「そうでもねェよ。ちっとばっかし分かりにくいだけだィ」

ふ、と沖田は溜息を吐いて、白い頬を真っ白い書類にこすり付けるのだ。

「…そこが好き、なんだけどねィ」

これこればっかりは、どうしようもないのだ。
それだけは、どうなったって決して変わらないと、沖田は信じている。だからこそ、動けないのだが。

「で…その人と、お付き合いしてるんですか?」
「してたらこんなに悩んだりしねェよ」

山崎はあまりの沖田の気の抜けように、おずおずとまた切り出した。
まさか、こんなにも沖田が沈んでいるとは思わなかったらしい。本気でその女性のことが、沖田は好きで好きで仕方がなくて――――恋煩いに、沈んでいるらしいのだ。
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