+++アンニュイ 弐+++
□かわいいひと。
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そのため、土方のこの半分意識が無い時間は、高杉にとっては貴重な接触時間でもあるのだ。
上掛けを意地悪く一寸こちらに引きずってやると、むずがるように首を振って寒くなった背中を嫌うかのようにますます擦り寄ってくる。
ぺた、とむき出しの高杉の袷の内、露出した肌に額を押し付けてくるものだからますます高杉は調子に乗るのだ。
「…たかすぎ、朝…」
「まだ早ェって、もう一寸寝てろよ」
「…おくれ、る…?」
頭が回っていないのだろう、たどたどしい口調でぼんやりと見上げてくる顔は険がすっかりと取れてしまってどこか幼い。
これでいいのか、と一寸思わないでもない高杉だ。
これが昔は道場で雑魚寝をしていたというから、おそらく沖田が蹴散らしていたのだろう。
遅れねェよ、と言うとまたん、と呟いて、一寸笑うとぽてんと胸に頭を預ける。
ざらりとした髪が肌に広がる感触がくすぐったい。
ぺた、とそれだけでは温度が足りないのか、回った腕が背中にひっつくのだから、土方が起きている時ではまったく考えられない。
さらにまたもぞもぞと定まりの良い位置を探しているのか、丸まった身体を少し伸ばして、足を絡めてくるではないか。
「…あんた、誘ってんのか?」
そんなはずがないと分かっているが思わず聞いてしまう高杉だ。
これ以上なく密着した体は抱きついているのと同じで意識がほとんど無いとはいってもサービス過多のような気がする。
朝っぱらからと思うような殊勝な性格でもなし。
する、とこちらは自由な手で、腰のあたりを撫でてみた。