+++アンニュイ 弐+++
□かわいいひと。
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「…んっ」
ぴく、と一瞬反応があったが、直ぐにまた夢の中に戻っていく土方だ。
昨日眠ったのが二時過ぎだから正味四時間少ししか眠っていないことになる。これで五時なんか(といってももうとっくに過ぎているのだが)いくら起きられないからといって起こすのは可哀想だ。
その原因を作ったのも、また今起こそうとしているのも自分なのだがそういうことはさっぱりと知らない振りをする高杉である。
する、と夜着のうち、忍び込んだ手が昨日付けてた跡のあたりを撫でる。
今度は眉根が寄ったが、まだ土方は起きない。
女のように柔らかくも、肉付きの良くもないけどなにより滑らかな皮膚をたどり、何度も布団の下、指がさわさわと往復を始める。そのたびにぴくぴくと僅かだが感度の高い身体は反応を示す。片手で自分の足に絡まる土方の足を撫で、ふわふわとを指先で辿り、脇腹に忍ばせる。贅肉の付かない身体、薄い皮膚の上をつ、とたどった途端、
「ぅ、あ…」
はっきりと声が零れた。
すっかり楽しくなってしまって、高杉がそっと頭を下げ、むき出しの耳を甘く噛んだ途端、
ピ、ピピピッピピピッ…
三個目の目覚ましがけたたましく鳴り出して、
……ぱち、と大きく目が開いた。
瞬間がち、と思い切り上向いた土方に顎を強打し、高杉は悶絶した。
土方も相当痛かったろうに、痛覚が鈍いのと寝起きで鈍いのとで気にした様子は無い。
ぱっちりと起きてしまったことに血圧が足りなくなったのか、跳ね起きかけて一度ぐらりと布団と仲良くしかけるものの、土方は何とかよろめきながら立ち上がり、目覚ましを手にして叫んだ。
「七時半過ぎてるじゃねぇかっ」