+++アンニュイ 弐+++

□かわいいひと。
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五時半と六時半の時計は高杉が止めてしまったのだから当然だ。
朝飯作ってる暇ねェぞ、と言いつつまたふらふらと洗面台に歩いていく。
何がまだ大丈夫だよ、と聞こえたから、どうやら高杉の言葉はちゃんと聞こえていたらしい。
廊下の往復に正味五分、洗顔に十分かかる(しかも途中で寝かける)ものだから朝食にまで手が回らなくとも仕方がない。

少し涙目になりつつも、高杉は何とか痛みをやり過ごし立ち上がった。

昨晩から放りっぱなしなになっていた上着をひっつかんで起き上がる。
案の定、廊下の壁にもたれかかって半分以上うつうつしていた土方の肩に一枚ぱさ、と羽織らせてやってひとつ口付けると、土方はちょっと赤くなって恨めしそうに高杉から目を逸らし、うそつき、とだけ呟いた。


ああやっぱり朝はいい、と思いながら、目覚ましの電池を今度は抜いておこうと決意する懲りない高杉なのだった。
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