+++アンニュイ 弐+++

□拍手詰め合わせ
3ページ/61ページ

「あいしてるよ〜」
馬鹿のように語尾を延ばしてひとこと、想いを言葉にのせてみる。想ったとおり相手は一瞥、心底あきれ返った目を向けて返事すらしなかった。
想いは確かにこの心中それもど真ん中で温められ続け、けれど大切にしているというのに相手には決して伝わることは無い。想いは真摯なのだけれど、伝達機関が邪魔をする。確かに自分の態度は不真面目だろう。銀時は土方に見えないようにこそりと顔わずか俯けて自嘲した。
けれど相手の耳が馬鹿馬鹿しいと思っても、この音を拾い上げてくれるようにふざけた態度でしか言葉にすることも出来ない。拒絶された想いは地面に墜ちて、無かったことになってしまうだろうから。
確実な方法なんて無い。わかっていて臆病にいつも逃げ道を用意している。否、己だけではなく自分と彼、両方の逃げ道を。

声に出せない心中の想いはただ積もって朽ちていく。
想いを届けることの出来ない声は、無残に叩き落とされて空に溶けていく。

どちらも彼のところに、心の中までたどり着くことはない。
彼の心はとても強固な砦で守られているので。

「……あいしているよ」
本当は自分だけのものにしてしまいたいけれど、許されないことを知っているから真剣な顔もしない。

誰か。


朽ちて溶けていく想いをせめて、拾い上げるすべを教えてくれないだろうか。


総て壊れて粉々になってしまう前に。


***
銀さんが弱り気味の銀土です。いや、銀→土……?
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ