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□鬼の嫁入り
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背後の大きな金屏風を前にして、真白い花嫁衣裳がちらちらとまたたいているような気がした。綿帽子を目深にかぶり、目元は見えないがほっそりと通った顎のラインが美しい。うっすらと紅をひいた唇が、一文字に引き結ばれていた。
白無垢姿の、花嫁である。
ああ、自分は嫁を貰ったのか――――

妙に納得したような気持ちで、高杉はぼんやりと、白無垢に吸い込まれる衿の鮮やかな紅色と、女のほっそりとした白い喉を眺めた。
何故自分が嫁なぞもらうのか、そんな疑問は夢の中で鈍った頭には浮かばない。ただひどく納得したような気持ちで、高杉は一寸息を吸い込むと、女に釣られたようにほんの少し目を伏せて、俯いた。何故だか直視をするのが不躾であるような気がしてならなかった。それでも女の、膝の上に重ねられた、細い指が視界に入る。華奢ではないが、ほっそりとした指だった。いかにも器用そうで、これがこれから水仕事で゜荒れるのかと思うと、まだ先のことだと言うのに何故だか酷く、それを高杉は哀れに思う。それほどたおやかで、美しい指だった。

「お前が結婚などするとは、今でも信じられん」

ぼんやりと吸いつけられるように女の指を凝視していた高杉は、ふと向けられる越えに首を振って、視線を上げた。なんとも複雑そうな、それでいてどことなく嬉しそうな顔をして、桂が自分を見ていた。今となってはそんな顔なぞ、きっと永遠に見られないだろうというような穏やかな顔だった。一応始めは大人しくしていたのに、正装に飽きたのか銀時が襟元を寛げて欠伸をしながら桂に賛同する。
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