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□定春三号。
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―――事の発端は一刻前であった。

その日土方の市中見回りの相方は山崎だった。

見回りは相手への監視の意味、また緊急事態の連絡要員として二人以上が鉄則である。元来あまり集団行動を好まない土方は、沖田か山崎と一緒に見回りに出ることが多かった。

副長という役柄外を歩いている暇があるかというと難しいのだが、気分転換をしないと腐ってしまう。ワーカーホリック気味の土方を見て近藤が主張したのである。

その近藤はというと、どうせ今日もストーキングに繰り出しているのだろう。一回逮捕してやろうかと思った土方だが、どうせその程度で衰える情熱ではなかろう。

そんなことを考えて溜息をつきつつ、山崎を殴りつつ、道程の半分ほどを無事に通過した時だった。

遠くからものすごいスピードで近づいてくる砂埃に気がついたのは。

同時に少女の声が鼓膜に突き刺さる。

「そこの黒いの二人!定春を止めるアル!!」

何だ、何が起こっている、定春って誰だ。疑問符を浮かべながら振り返った二人に白くて大きなものが激突した。刀を抜く暇も無かった。

綺麗に放物線を描いて落下した二人が何とか脳震盪から立ち直ったとき、「定春」と呼ばれた巨大生物は走り去った後だった。そして何故だか飼い主とおぼしき少女は、「定春」を追いかけずに二人の前で仁王立ちしていたのである。

捕まえてくれなかった、できるかこの。

そういったやり取りの後桃色の髪をした少女は溜息を吐きつつ呟いた。

「もういいネ。役立たずに任せても定春は捕まらないアル」

何だと、と突っかかろうとした瞬間、スカーフを掴まれつんのめり、そして

―――かしゃん。

留め金のしまる音。

何故か首元に、分厚い革の首輪があった。
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