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□My life with cat
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***My life with cat***
猫を拾った。
拾ったというのは正しくない。道端で目があったら勝手に付いてきて、そのうち勝手にふらりとどこかに行って、そして適当な時間がたつとまた勝手に帰ってくるのだ。
そして勝手に飯だけは食っている。
馴れているかというとそうでもあり、そうでもなし。
どこまでも自分たちの関係は中途半端だ。だが逆にそれが気が楽でよいともいえる。定期性に乏しい生活をしているため、動物を飼うなんてとんでもないと思っていたし好かれる性情だとも思っていなかった。
どこまでも中途半端で、意外な事尽くめだ。
直ぐに居なくなるだろうと高をくくって餌をやっていたそれは、また今日も軒先に来ている。
こちらの生活がとこと不健康で不正確だというのに、猫は一向に気にする様子は無かった。アバウトな性格をしているのかもしれないが、よく飽きないものだとも思う。
真っ黒な猫。
つやつやとした毛皮は半ノラだとは思えない。きっと自分以外にエサをやる奴がいいものを食べさせているのだろう。それならどうしてさっさとそちらの飼い猫になってしまわないのだろう。
猫という奴は存外気まぐれだと聞いていたが、ここまでとは思わなかった。
妙に構わないのが良いのかもしれない。こちらも嫌な気がしないから、もうどっちもどっちなのだ。近頃ではそう思うことにしている。実際こういう類のものに愛着が沸くとは思ってもみなかった。
いつものようにエサをやろうと台所の下の扉を開いて缶詰を取り出して、封を切り始める手元を注視する視線がある。
何が出てくるのだろうとテーブルの端にしがみつくようにしてみていた沖田の、少し意外そうで、それでいて恨みがましそうな視線だった。気が付かない振りをして缶切りをあやつる。キィと動かすたびにかすれた音がした。使い込んでいる証拠だ。あの猫が来てもう一年以上になる。大きくなったはずだ。
「あんたがそんなもん飼ってるだなんて、思いもしやせんでした」
小皿に中身を移して縁側に出る後ろから沖田がついてくる。そんなに意外か、と聞こうとしてやめた。意外に決まっている。