+++オフィシャル+++

□傷跡と、証拠
2ページ/9ページ

+++傷跡と、証拠+++



「…何してきたか、聞かないわけ?」

ぱっくりと裂けた着流しと上着を剥ぎ取り、洗濯機につっこんでから救急箱を取って戻ってきた土方に、銀時はちらりと視線を向ける。

てっきり質問攻めにあうかと思っていたのに、土方の反応は障子を開けた以降は、土方の反応は非常に冷静かつ冷淡なものだった。
薬箱の中身を点検して必要なものを取り出しつつ、かすかな溜息を零して聞いてほしいのか、と呟くだけだ。

「聞くだけ無駄だろ。お前のことだから、どうせまた変な騒動にでも巻き込まれたに決まってる」

むき出しの肩にそっと触れながら、連続した溜息はひそやかに肌の上をすべり湿らせる。
ふるりと震えた肩を土方は目ざとく見つけたが、大人しくしていろ、と釘をさしただけだった。

血を拭う手つきは少し乱暴だ。

ぱっくりと裂けた傷口は、相手の腕が良かったのからだろう、切り口は綺麗に一直線でなおかつ出血量は多いが傷自体は浅くまた出血も既に止まっている。
着流しが白いから余計に目立ったのだろう。

普段から体を鍛えているわけではないと思うのに、きちんと筋肉のついた体にはこまごまとした古傷が残っている。

昔のだろうな、と土方は口中呟いた。

背中はまだ綺麗なものだが、それでも小さな傷がいくつか残っていた。戦争中で背後から襲い掛かるなんてことは卑怯でもないのだから仕方が無い。

銀時が語ろうとしない過去を、彼が思っているよりもずっと土方は知っている。

実際五体満足で大きな後遺症もなしに攘夷戦争を切り抜けた銀時にとっては、この程度の傷などどうということもないのかもしれない。

何故だか不意に腹立たしくなって大量の消毒液を、裸の肩に思い切り振り掛けてやった。
びくりと沈黙を保っていた肩が面白いように跳ねる。肌を伝っていった液体は、ぽたぽたと肘にたまって滴ると、畳を濃色に染め上げていった。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ