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□原付デート
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欠伸をしながらジャンプを買いに、いつものごとく二階から降りてきた銀時は階段を降りきった途端に硬直した。それはそれは見事に固まった。
先日の騒動で大破した原付、源外に頼み込んで元通りに直してもらったそれ。
新しいのを買った方が早いというほどにボロボロだったそれをきちんと復元してくれるあたり、源外も少しは悪く思っていたらしい。きっちりと代金は取られたものの、格安だった。

その原付の後部―――――腰掛けた男は何をしているのだろうかとちらちら向けられる通行人の視線を気にすることも無く悠々と煙草を吹かしている。

その唇が紫煙を吐き出し、ようやく浅い色をした目が突っ立ったまま硬直している銀時を見つけて、

土方はふぅと唇の端を吊り上げて微笑した。

金縛りにあっていたかのような重い足が解放される。
どぎまぎしながら銀時は原付の荷台に腰を下ろした土方に近付いた。

(これって…待ち伏せ、だよな)

休憩していただけかもしれないとも思ったが、革靴の足元に転がっている吸殻の数がそれを裏切っている。
つい疑ってしまうのは普段の土方があまりにも素っ気無いからだ。土方が明確な用もないのに万事屋を訪れることはほとんど無い。大体屯所に行くのも、土方の私宅に行くのも銀時の方からだった。
素っ気無い土方に昔ならばいざ知らず、今は恋人といっていい関係なのだからと銀時も不満はある。
しかし土方の気質もあり、それだったら自分からアプローチした方が早い―――――そう銀時は思っていたのだった。

その土方が何故か、原付の後部に寄りかかるように腰を預けて待っている。
銀時が少し警戒したのも無理の無いことだった。

「…土方?」
「それ以外の誰に見える?」

ちらりと流し目で視線を寄越されて銀時は頬をかくしかない。あまり機嫌はよろしくないようだ。そういえばこのところ、怪我もまたしたことだし土方も仕事が忙しかったらしく碌に会うこともできなかった。勿論巡察の際たまたま一緒になったら路地に連れ込もうとしたり、人目がなければキスもしたりしていたが、ことごとく怒られたような気がする。相手は警察だし、部下も一緒に巡察しているのだから外でいちゃつくのは抵抗もあるのだろう。
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