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□サンタだってクリスマスしたい! …多分
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北極海の上に浮かんだ孤島に、モミの木が映える季節になりました。
映えるも何も、一年中このあたりは溶けない雪に覆われた銀世界です。
モミの木には雪をかぶりっ放し、そもそも植物がまともに生えるような所ではありません。
ですがこの北極海のこの島は特別です。
サンタの住む島、何もないこの小さな島は、その恩恵に守られて、十二月に入り輝きを増しているようでした。
サンタの住む島は北極の冷たい海の上にあります。フィンランドで世界中の子供たちから手紙を受取っているのは彼らの事務局なのです。そもそもサンタさんの家が暴かれてしまうのは、小さい子供の夢とサンタさんのプライバシーに関わるのではないかと思うのですが、住居くらいならまだマシな方なのです。何せ最近では、サンタさんの飛行軌跡を衛星で追跡して、リアルタイムで公開するようなサイトまであるらしいのです。
おかげで仕事の邪魔をされまくり、とぼやいてもさすがサンタクロース。それしきの妨害など屁でもなく、サクサクと世界中の子供たちにサンタさんは毎年プレゼント配りまくっています。

十二月の末、おそらくこの日だけは全世界の誰よりも働くサンタクロースの住む島では、いよいよソリが滑走路に準備されています。
八頭のトナカイの後ろには、一気に四人も五人も乗れそうなソリが一つ。今晩から二十五日にかけては、そのソリの後部座席はプレゼントの山に覆われます。たったひとつきりの袋の中には、世界中の子供たちへのプレゼントと夢が詰まっています。
質量保存の法則ですとか、空間その他諸々を捻じ曲げていそうな、なんとも不思議な袋です。
その袋だけではありません。ソリをひくトナカイだって大したものです。
八頭立てのトナカイゾリは、悠々としていると見せかけて、新幹線の六倍――――単純計算でもマッハ1.3も出すらしいのです。風防もない、ジェット燃料もないソリで、トナカイの足がそれだけ出すというですから、サンタさんの技術(ムチさばき)を研究すれば、世界は新たな科学のステージを上るのかもしれません。
とはいえ、それを追求するのは無粋というものです。

銀さん太は外に出るなり、吹き抜ける風に首を竦めました。
白いもこもこのファーが首元を覆っておりますが、それしきでは何とかなる寒さではありません。今日は比較的風も凪いでいるようですが、吹雪いた日など、コタツの中でずっと丸くなっていたい気分になります。ですが、常日頃は小人達に仕込みを任せてだらだらしていればいい銀さん太も、この日ばかりはそうするわけにはいきません。何せ今日はクリスマスイブ。明日までの二十四時間、銀さん太はソリ上の人になればならないのです。
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