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□サンタだってクリスマスしたい! …多分
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「大体よォ、自分のガキ以外に夢バラ撒くってどうよ。そのためにこの寒空の下をソリで音速突破だぜ。危険手当が足りねェよ」
「ちょっと銀さん、子供の夢を壊さないでくださいよ。アンタ仮にもサンタクロースなんですから。南半球は今は夏ですよ」
それに…
と言いさして、きらめく眼鏡のトナカイ・新八は口を噤みました。あまりに高度な反射能力を持つ眼鏡を愛用しているがために、相対するトナカイ全てに「うおっ、まぶしっ!!」と避けられてしまういじめられっ子トナカイも、今日ばかりは面目躍如です。暗い夜道はそのどこからどう見ても反射ではないレベルの、サーチライト級の眼鏡がなければ危なくて駆け抜けられないのです。
とはいえ、不夜城という都市部が次第に増えつつある現在、新八の存在意義は危機に瀕しているのですが。
――――蛇足でした。
寒かろうがそうでなかろうがなんだろうが、この日ばかりはサンタクロースは子供たちに夢を届ける人なります。それが彼らの仕事なのです。銀さん太が愚痴ろう、嘆こうと。
(それに――――…)
今銀さん太が出てきたばかりのペントハウスの室内から、一人の青年が出てくるのに気が付いて、新八は首を竦めました。
(それに、アンタに子供がいないのは…男の人を奥さんにしたからでしょうが)
出て来た青年は、黒い髪に真白い肌の美しい――――ですがどこからどう見ても男に違いありませんでした。
「銀時!」
「十四郎〜。もーやだ。出かけたくねぇ」
青年――――土方が駆け寄ってくるやいなや、銀さん太の仕事したくない病は最高潮になったようで、くるりと振り返り奥さんの肩に髪を擦り付けます。「バカを言うな」と軽くいなされているあたりが慣れたものです。奥さんと銀さん太が結婚してから、数年繰り返されてきた会話だから、でしょうか。
「だってよう、世のカップル共は今日のこの日にイチャつきまくってんだぜ?何で俺たちはこの日に離れ離れになんねーといけねーの」
「それはお前がサンタだからだ。良かったな、何処に行っても今日はお前が主役だ」
「全然嬉しくありませんー。俺も十四郎の作った飯食いたい。ターキー食いたい。ケーキ食いたいー!!」
「駄々をこねるな、どっちがガキだ!ほら、帽子ずれてるぞ。そんなんじゃ吹き飛ばされちまうぜ」
擦りついてくる大の男をあやしながら、奥さんは銀さん太の銀色に輝く髪を撫でます。赤い帽子はキラキラとした白銀色の髪に映えて、しっかりとなでつけ帽子をかぶせ直した奥さんは満足そうに溜息を吐きました。それを拗ねながらも大人しく銀さん太は受け止めるのです。
「お前、去年は帽子にゴム紐つけさせようとしてたよな、そういえば」
「当たり前だ。マッハ出てるんだぞ。帽子がなかったら髪が毟られて、戻ってきた頃にはズルッパゲだ!はげ散らかるどころじゃねェぞ」
ぺしんと額をはたかれて、銀さん太は唇を尖らせます。
生身でマッハを出したらそりゃあズル剥けるでしょう。剥けるだけではすまないかもしれませんが。そんな中でゴム紐の存在が、どれほど役に立つかも分かりませんが。
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