隠れ家

□空籠
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日が暮れる頃に銀時の仕事は終わる。ガテン系の連続は前していた仕事よりずっと体力的に厳しい。前だってガテン系のような体力労働はちょくちょくやっていて、万事屋というよりアルバイターだったのだがそれでも今のようにみっちりと日雇い労働ばかりやっていたわけではなかった。
以前に比べれば、ずっと自分は勤勉になったと銀時は思う。
きっとそれは、自分とずっと一緒に生きてくれる人がいるからだ。


  +++ 空籠 +++


首にタオルを巻いて、ヘルメットから汗に蒸れた頭皮を解放した銀時は放り投げるように簡易ロッカーに仕事用具一式を突っ込んだ。元々髪色が銀色であることからも分かるように肌は白いほうだったのだが、それでも多少は日焼けしたような気がする。毎日日焼け止めも塗らないで外で汗水たらしていればこうなるだろうという健康色だ。そういえば、筋肉も前より少し目立ってきている気がした。元々が着やせするほうだったから目立たないだけでちゃんと筋肉はついたていたのだが、それが外側にも目立つようになったのだろう。
また明日、と同じく日雇い労働者仲間に手を振って原付もなく歩いて帰る道は、夕日に照らされた綺麗なマンダリンオレンジだ。
ふとした瞬間に以前の生活を思い出すけれど、それに切望するだけでないのはやはり、彼のおかげなのだろう。
ぶらぶらと歩き始めたのに最後は少し駆け足になって、鉄階段をたわんだ音を立てながら駆け上がった古いアパートの二階。
夕飯の準備中なのだろう、半分明けた台所の小窓からは魚を焼く匂いが廊下までこぼれてきていた。
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