隠れ家

□夜の泣く色
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「一人寝させんのかよ」

縁側から庭に下りた途端に横合いから掛けられた声に、不機嫌そうに高杉は振り向いた。
夜中も夜中、とっぷりと日は暮れていたが、振り返った先の男の髪は浮き上がるように白い。

「おめーのことだから寝かしつけんのかと思ったぜ」
「てめェこそいつもがっついてやがるくせにそんな気配もねェじゃねーか。普段あんだけひっつきまわっといてよォ」

吐く毒は、毒というには弱弱しすぎた。銀時は肩をすくめて、まァね、と力の抜けたような声で言ったきりだった。

夜は死のように澄んで、濃い。死んだばかりの夏の残しか、生ぬるい風ばかりがわずかに湿って、二人の襟元をじとりと湿らせていた。
土方の私宅である。
あの後、銀時が声を掛けるより先に土方はさっさと屋上から降りて、とうとう集中治療室――――いや、彼女はもう霊安室に移されてしまっていただろうか。一度も立ち寄ることなく、足を引きずりながらもタクシーを使うこともなく私宅へと戻った。
弾丸は貫通しているとはいえ出血も多かった傷だ。そのまま放っておくわけにも行かずに後を追った銀時だが、とても声を掛けられる雰囲気ではなく、そのまま二人は一言も言葉を交わすことなく、長い長い夜更けの散歩をした。
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