隠れ家

□夜の泣く色
2ページ/6ページ

土方は、弱味を他人に見せたがらない。
虚勢を張っているのではなく、ごく本能的なものらしい。障子の向こうでおざなりに敷いた布団の上、丸まっているだろう男を高杉は想像した。
野生の黒豹が木上でそうするように、隙もなく浅い夢を見ているのだろう。
それともじっとただ、体力のわずかな回復を待っているのだろうか。
土方は誰よりも組織というものに対して厳格だ。だからこそ、時に頑丈な首輪をはめられた忠実で従順な犬に見えることもある。
けれど、土方の本質は限りなく野生に住まう獣に近い。
弱っているところを、野生の動物は誰かに見せたりしない。弱っているのを悟られれば獲物になってしまうからだ。
土方は誰の獲物になることを、恐れているのだろうか――――そんな詮無いことを想像して、クッと自嘲に唇をゆがめた高杉を、淀んだ目で眺めていた銀時は、わずかに苛立たしげに髪をかき回した。

「張り合うこともさせちゃくれなかったよ」
「だそうだな」
「あっちからしてみりゃあ、とんでもねェことなんだろうけどな」

恋しくて恋しくて仕方がない男を抱きしめることの出来る男だ。
彼女に気が付かせるようなこともしなかったけれど、けれど彼女は知っていたのかもしれない。そんな気がする。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ