隠れ家

□父親の野望
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銀時には夢があった。
ムー大陸の入り口を探し当てることより、お菓子の国の王様になるより、ずっとずっとちっぽけでかつ大きな夢があった。
妻(というと、彼は未だに微妙そうな顔をするのだが)が女の子を産んだときにその野望ともいうべき夢は生まれ、年々大きくなっている。おそらくは女の子を持つ沢山の男親に共通する、些細だけれど重要な夢。

『あたし、大きくなったら、パパのお嫁さんになるのっ』

しかし銀時の可愛い娘たちは、一筋縄では行きそうにない。



「……るりときらもいつかはお嫁にいっちゃうんだよなァ…」

真剣極まりない顔で突然そんなことを言い出した父親を、姉妹は新聞広告のブライダルフェアから顔を上げてきょとんと眺めた。何故だかいつもの死んだ魚のような、と評されるやる気ゼロの目ではなく、今にも泣き出しそうな深刻な面持ちで父親は自分たちを眺めている。

「…えー、そんなこと言ってもいつかは自立するものだし、そうなったらお嫁に入るかどうかは別としてずっと一緒ってわけにはいかないと思うんだけど…」
「銀パパ、お嫁ってあんまり言うと、妙姉さまに怒られるのー」
「それに私たち大人になったら伝説の秘宝ワンパークを探しに宇宙に出るつもりだし」
「宇宙なんて危ないところに出ちゃいけません!!そんなとこ行くくらいならまだ沖田とバケモ…西郷ママの息子の方が……やっぱり全然マシじゃねェエエ!!」
「銀パパ、お顔こわーい…」

きらがぽそりと呟いた。
怖いというより気持ち悪いと高杉あたりなら評したかもしれない。切羽詰って自己突っ込みを開始した銀時の顔は絶妙に気色悪い。
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