隠れ家

□銀色中毒
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少し調子の外れた昼休みの鐘が鳴ると、一気に教室内には緩んだ空気が流れ出した。
ごそごそといつものように重箱に詰められた一人前にはいささか多い二段重の昼食をやれやれと持ち上げた土方に向かって、おおい、と女子の輪から外れた一人の少女が歩み寄った。

土方の通う学校は、制服のデザインが可愛いと評判で、近隣の女子学生から羨ましがられている。

男子の制服はただの詰襟でそうそうデザインに変わったところは無いのだが、女子の制服が可愛い。
冬場の制服は黒一色なのだが、アクセントのスカーフが襟元を可愛らしく演出している。裾も短く、ふんわりとそれが翻るとまだ寒い季節なのに土方の頭の中は春になったように明るくなる。
というより、のぼせてしまう。

たとえその少女が、少女というにはかなり異色な、いや少女といったら他の少女たちに私刑にかけられるのではないか?というようないかつい体格をしていても、土方は全くそんなことは問題ではなかった。
たとえその可愛らしいデザインの制服の胸の部分が特注にも関わらずパンパンになっていたとしても、まるでその生地を押し上げる胸が到底少女のものには見えずむしろ完全に逞しい男性の胸板にしか見えなかったとしても、女の子のそんなところをじろじろ見るのは失礼だと、土方はある意味潔癖な少年であったものだから気付きもしなかった。
たとえ膝上丈のスカートから伸びるニーソックスの足が自分より逞しかろうが、絶対領域がすさまじい筋肉で構成されていようが、胸と同じように凝視するなんてとても出来ない土方は気が付いていなかった。
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