隠れ家

□女王様と俺
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土方の機嫌が悪い。

悪鬼のような表情で玄関口に立った家主を見て、高杉は反射的に小さくなった。そんなことをすれば普段からかわれている通り、ますます見えなくなるというもので、できるだけ横柄にとは行かないが自然体でいたい高杉なのだが、本能がそうさせるのだから仕方がない。

仕事で何かあったのか、土方の顔色はくすむように悪く、そして恐ろしかった。造作は美人だというのにこれでは地獄の鬼だと思ってしまうほどだ。江戸城で何か言われたか、桂にでも逃げられたのだろうとあたりをつけた高杉は、旧友に大人しく捕まっておけよと舌打ちした。あんまりな言いようではあるけれど、土方に下僕扱いをされている身としては、旧友の身<自分の平和である。癇癪を起こしたら手の付けられない土方と生活をするのは本当に気を遣う。元来お坊ちゃま気質の高杉だったが、この状態の土方と暮らして一月が経つと、家事も一通りできるまでら成長(?)し、何より生来なかった慎ましさまでもが備わっていた。
彼の友人は一様に驚きを見せたものだが、高杉はそうなった経緯は出来ることなら、あまり話したくはないと影を作っては矛先をかわしてきたのた。

無言で出迎えた高杉のその横を土方が通り過ぎると、その脱ぎ散らかした靴を丁寧にそろえてから高杉はその後姿を追いかける。
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