隠れ家

□女王様と俺
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土方は、気が短い。
そしてすぐ殴る。

顔はいいのに、ドメスティックバイオレンスに走るタイプだと高杉は思った。甘い顔で惹き付けておいて雁字搦めにするのに、とんでもない性格破綻者だったりするのだ。女に対しては手を上げたりはしないようだけれど、少なくとも土方は高杉に対してはそうだ。
追いかけると、既に土方は隊服の上着を脱ぎかけていたところであった。
高杉が無言でそれを受け取り、ハンガーに掛けて戻ってくると、土方は既にテーブルの前についているから黙って台所に行き、冷蔵庫の扉を開く。

「ん」

鷹揚に土方が差し出した手の上に、高杉は業務用マヨネーズを恭しく差し出した。
この家の中での順位は、高杉<煙草≦マヨネーズ<土方なのだ。高杉は既にモノ以下の扱いになっている。
毎度の事ながら、高杉は心中涙しつつ、たちまちマヨまみれにされていくおでんを横目に自分の箸を手にとった。食事自体にケチケチしない土方は、高杉が自分と同じ食卓で食事をすることについては何も言わない。おもむろにチューブから搾り出されていくマヨネーズの音をぼんやりと聞きながら、高杉は何故こんなことになってしまったのかと遠い目をした。

高杉晋助。
過激派攘夷志士かつ凶悪テロリスト、のはずだ。

それが何故真撰組副長の私宅で家政夫どころか下僕扱いされているのか。

以前は高杉だって普通だった。ちゃんとSで鬼畜だった。
そして土方は流されるようにしてMになっていた。それがこんなことになるとは、やはり沖田の恐怖に日々晒されて土壌が出来ていたのか、それとも元々そちらの気質があったのか。
土方がドS(どころかド鬼畜)に開眼したのは、高杉の浮気が重なったある日のことだった。
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