隠れ家

□純化願望
1ページ/9ページ

鳥が生きているらしいということを高杉が知ったのは、宇宙に上がって数ヶ月が経った頃のことだった。
宇宙に出たとはいえ、高杉に春雨とべったり信頼関係を築く気は元からなかった。
高杉は他人を信頼しない。信用は多少はするかもしれないが。
春雨が自分と組んだのは、旨味があるからに過ぎないということも知っていた。彼らのそういう合理的なところを高杉は一応評価している。あちらが自分を利用する気なら、それ以上にこちらが彼らを利用するだけだった。
また子あたりは高杉を絶対視しているものだから、何やかやと現状に不満を持っているようではあったが。
宇宙ですべきことにある程度のあたりをつけた高杉はさっさと地上に戻った。元々宇宙に引きこもっているつもりはなかったし、風景の変わらない永遠の夜の中は思った以上に味気なくて長居をする気にはなれなかったのだ。旧知の男にその点高杉は関心している。この細やかな星の瞬きだけを目に星星を渡るなどという芸当は、高杉の神経では耐えられそうになかった。慣れてしまえばどうということもないのかもしれないが、三ヶ月以上居て慣れなかったのだから仕方がない。

地上に戻った高杉が残留組に聞いたのが、その情報だったのだ。

(――――白夜叉を見かけた。)

古巣の京に残った一人は攘夷戦争時代からの筋金入りだ。その男がほど近くで白夜叉を見かけたのだという。
高杉は片眉を跳ね上げた。
銀時は生きていたらしい。
あの高さから落ちて死なないところは成程、しぶといあの男らしかった。一定の高さから落下すれば水面はコンクリートと同等以上の硬さでもって柔らかい肉体を迎えるというのに。

「一人だけか」

何故そうその時聞いたかは、高杉自信分からない。
あの子供の脆弱な体が銀時と同じ悪運に助けられるとは考えられなかったが、ただの確認のつもりだったのだろう。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ