隠れ家

□金銀参謀
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金の参謀(ツンツン)








目障りで仕方がない。
馬鹿は馬鹿なりに馬鹿をやっていればいいのだ。あの局長しかり弟分の破壊魔王子しかり、愚にもつかないことに興じていれば良いのだ。刀を振り回してお山の大将を気取っていればいいのだ。
そうだというのに、馬鹿のくせにいちいち突っかかってくるのだから仕様がない。中途半端な知恵がついた馬鹿は手に負えないものなのだ。しかもその馬鹿が妙に聡いから困る。
久方ぶりに戻った屯所で飲んだ酒はまずかった。近藤相手に話しかけても全く知的刺激がないのだから実りもない。そもそも今度の交渉だって100%意が通じたといえばそうではなかった。あの局長と破壊魔王子の問題行動のおかげで相手方が渋ったものだから骨が折れる。馬鹿だから馬鹿並に行動しているのだろうが、近藤といい沖田といい馬鹿なら身の程を弁えて大人しくしていればいいのだ。今回の帰営で実りがあったといえば、あの土方の無様な土下座姿を見たことくらいしかない。

――――あれはまったく滑稽だった。

いつも敵前逃亡は士道不覚悟だと偉そうに言っているくせ、命乞いなど不覚悟どころではない。何か事情があったらしいが、切腹どころか斬首されてもいいのではないか。
全く愉快だ。
恩まで(あの男は恩だとは欠片ほども思わないだろうが)売れたのだからこれほど気持ちのいいことはなかった。

土方だけは、駄目なのだ。
この愚にもつかない連中の中で、土方だけが何故だか僕は駄目だった。他はどうとでもなる連中ばかりだ。近藤しかり沖田しかり、適当に言いくるめてしまえる可愛さを多少なりとももっている。
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