隠れ家

□家族の肖像  桃色火種
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OKです、の声と共に四方八方から当てられていた強いライトが一気に消えて、あちらこちらで刀を振り上げていた四人は誰とも無く汚れきった顔を見合わせて、溜息を吐いた。
次第に噴出し充満していた土煙が収まって、天人のエキストラたちがぞろぞろと引き上げていく。その向こう側にレフ版やに音響マイクからがズラリと並んでいるのを見て、高杉は思わずあまりのばかばかしさに笑い出しそうになった。たかがテレビのために呼び出されてこんなことをしている自分が心底滑稽で仕方がない。いっそエキストラの天人たちをバッサリとやってしまおうかと思った高杉だが、渡されていた刀は撮影用の模造刀だったものだからそれも出来なかった。そもそもそれは土方に怒られるだろう。
お疲れ様です、との声に返事をする余裕もない。流石にワンカットだけならどうとでもなるが、今回は高杉がメインであったため、あっちこっちに引っ張りまわされ衣装を着替えさせられメイクもされた高杉はすっかりと疲弊していた。
照明も中々に侮れない。長時間浴び続ければ脱水症状を起こしそうになってしまうのだという。一緒に攘夷戦争時代の再現シーンとして刀を振っていた三人もそれぞれぐったりとしていた。一カット(しかも遠景)だけだった坂本はまだましだが、銀時と桂は初めのころに叩いていた軽口もどこかにいってしまったようだ。
人数が多いため一番撮り直しが多かった天人軍との斬りあいのシーンは最早精神力でこなしたようなものだ。

「…大体さァ、何でおめーの回想俺ばっかり出てるんだよ。高杉ィ、おめー実は俺のストーカーなんじゃねェの」
「煩ェ…てめーにストーキングしてゴリラの仲間入りするくれェだったらトシにするわ…」
「それではいつものことではないか、高杉」
「その上近藤の仲間入りは避けられんしのー」

ぐんにゃりとした声で突っ込みを入れられて高杉は顔を派手にしかめる。土方が私宅にいるときはべったりの高杉は、そういわれても仕方がないのかもしれない。
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