隠れ家
□blue bird
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きしり、きしりと音を立てて背中に気配を感じたら、次の瞬間にはその尖った顎が肩口に乗せられ、軽く体重をかけられて土方の体は前のめりに傾く。
男は耳を食まんばかりの距離で甘えるように囁いた。
「久しぶりなんだ、ちったァ愛想振りまいたって罰はあたらねェぜ」
「…お前の顔は、見慣れてるけどな」
「手配書でってか?ハッ、味気ねェもんだ」
後ろから回された腕が確かめるようにあちこちに触れて、最後に頬を撫でると肩をつかまれ、振り向かされる。椿の赤と緑から限界を奪った男はにやりと口元をゆがめて笑っていた。
「高杉…」
名を呼ぶ唇は直ぐにふさがれる。
目を伏せ他人の体温にぴくりと指先を揺らした土方は、その手を上げて男の左目の上に厚く巻かれた包帯の表面を確かめるように撫でる。木綿のザラリとした感触にやっと体の力を抜いた土方に、高杉は喉を鳴らして上唇を赤い舌でチロリと舐めた。
「何時振りだ…?」
「ああ…前のガサ入れの件を流したきりだから、」
上手いことやっていたようで何よりだ、と自分で聞いたくせに高杉は引き寄せた土方の膝に転がってその思考を中断させる。
「窮屈か?」
伸ばされた手に頬に寄せ押し当てて、土方はそうっと目を伏せる。ざらついた手のひらの感覚に、ほんの少しだけ睫毛が揺れた。