隠れ家

□Doll play(高杉編)
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家柄は違うが、一等仲の良い、兄弟のように育った少年だった。
相手は農民の子どもで、自分は武士の家に生まれたから、本当は最初から一緒にいられるはずがなかったのだ。大きくなるにつれて子供のうちはと思っていた親たちもそれぞれの限度を教えだす。それでも高杉にとって、その子供は誰より大事な幼馴染だった。
高杉はひねくれた子供だったから泣かせたこともあったけれど、気の強い少年は高杉が武士の子供だといっても全くかしこまったり怯えたりしなかったし、いつも平等に笑ってくれた。
いつしか高杉はその少年にのめりこんでいく自分を自覚するようになっていた。寺子屋に通っても、道場で竹刀を振るときも、何故隣にあの子供がいてはいけないのかとそればかり考え立ていた。
天人が押し寄せて生活が一変しても全く社会は変わらなかった。
いつも武士とその他の人種には隔たりがあった。

ずっと一緒にいられればいいのに。
そう願わなかったこことなど無い。だが高杉は鬼兵隊を作ったとき、その少年だけは、一緒にいたいと思いつつも入隊を許可することはなかったのだ。
子供は泣いて怒ったけれど、高杉はどんなに懇願されても首を縦には振らなかった。

「殺し合いをすんだ」

高杉より二つ年下の少年は、まだ刀を握って戦うには早い。
高杉だって少年という年頃なのだ。目尻を真っ赤にして自分を見上げる少年の異人のように蒼い睛を高杉は覗き込む。大きなその目一杯に自分の顔が映っていた。
ああ、こんなふうにこいつの中が俺だけで一杯になってしまえば良いのに。
思うだけで胸中が一杯になってしまうのに、どうしても言葉にならないのが歯がゆかった。
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