隠れ家
□Doll Pray(Doll Play後話)
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Doll Pray 1 (Doll Play後話)
高杉は幸福だった。
幼い頃から想い続けた幼馴染を終に手に入れたのである。
ひと悶着、どころか今に至るまでの苦労を思うと、とてもではないが山あり谷ありだったと思う。親に引き離されそうになったり、出兵で離れ離れになって死に掛けたり、再会したらいつの間にやら敵同士だったり。
ドラマの一本や二本書けるのではないかと思えるのは、今手元に彼がいて、ドラマが高杉にとってはハッピーエンドで終わったからだ。
「十四郎」
刀に魂を吸われた後遺症か、目を覚ましてもめっきりと眠る時間の多くなった青年(外見は、とつくが)にうっとりと高杉は呼びかけた。ううん、と寝苦しそうに土方は抱き枕に抱きついただけである。襟元が肌蹴て情交の跡が見え、思わず高杉はそっとそれをなおす。自分一人のときならニヤニヤと楽しんでいれば良いのだがそうも行かない。
「十四郎、メシの時間だ」
寝顔を楽しんでいるのにもそろそろ時刻が迫ってきていたので、高杉は土方を本格的に起こすことにした。食事は私室に運んでもいいのだが、(実際始めはそうしていたのだが)そろそろ土方を隊の人間に慣れさせなければならない。いつ何時自分がいない間に斬られそうになるか分かったものではないのだ。
「晋…?」
のんびりとした声が聞くのに、高杉は頷いた。
伸ばされた手が首に絡みつくのに従って寝そべった体の上に倒れこむと、猫が甘えるように喉下に擦り寄られる。
くつくつと笑って頬に口付けて、朝のいつもの挨拶である。
口にキスをしたら朝から止まらなくなることは数日前に体験済みだ。
「おはよう」
「…おはよう…」
目を擦ってベッドから降りかけて、土方の足が止まる。
昨日ので腰でも抜けたのか、とにまにまする高杉を襲ったのは鋭い裏拳の一撃であった。
「変なモン着せんなって言っただろ!!」
派手に決まった一撃に、鼻血を垂らしてうずくまる高杉の前に仁王立ちした土方は――――何故か水色のナース服だった。