隠れ家

□blue bird 1.5
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伊東と約束を取り付けれたその隣室に、土方を呼び出し直前までさんざ抱いて、今までの話を聞かせていたのである。
重たそうな目蓋はゆっくりと伏せられ、今にも眠ってしまいそうな気だるさを叱咤して、ゆっくりと再び持ち上げられる。それを覗き込みながら、高杉は笑った。

「てめェも大概スキモノだなァ?フェロモン垂れ流しにしてっからあんな奴も吸い寄せちまう…てめェはあのヤローの最大の理解者だとよ」

反論をしようとしたのか、淡い色の睛はゆっくりと高杉を向いて、水気を含んでぽってりとした口唇が開いてはややあって、そのまま何も言わずに閉じられた。高杉の言動には大概慣れている土方だが、それが今、高杉には面白くない。

「会わねェ間にすっかり色目使われてるんじゃねぇか。思い込みは激しそうなヤローだが、さて、何もなしであそこまでてめェに惚れ込む物かねェ」

スルリと帯を引き抜いて、いよいよ乱れた裾を払うように広げれば、白い足のいたるところ、薄い皮膚に花は散らされている。
いつでも会える訳ではないから、会えば自然と激しい交合になるのだが、それでもここまでの惨状には滅多にはならない。片足を持ち上げて肩にかけようとして、高杉はふと思いついてそのふくらはぎをそっと食んだ。
ひくり、と薄い脂肪の乗った腿が震えたが、すっかりと掠れてしまっているらしい声はほとんど出なかった。
高杉は吐き捨てるように低い声で嗤う。

「理解者なんて必要なもんか。あいつが欲しいのは真撰組でも、上の連中の理解でもねェ。てめェだ、十四郎。ガチガチの頭で考えてるからそんなこともわからねェのサ」

おかしそうな口ぶりで言うくせに、顔はちっとも笑ってはいない。
どうやら伊東は、高杉の所有欲をいたく刺激したらしかった。土方はぼんやりとした睛で、抱え上げられた足の向こうの高杉を見上げている。
高杉は自分のものに手を出されるのが大嫌いだ。
そういう、子供臭いところがある。物欲は基本的に乏しいくせに、気に入ったものにはとてつもない独占欲を見せることもある。
土方は今にも眠りに落ちてしまいそうな目をして、高杉を見上げてやっと口を開いた。

「何を言ってほしいんだ、晋助」

高杉はニヤリと笑って、首を振った。

「そうじゃねェだろ、十四郎」
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