隠れ家

□リセット・ザ・ワールド
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武装警察の私宅にテロリストが二匹も住み着いているだなんて、謝って済む問題ではない。
それをリセットしてしまえ――――と、沖田は言いたいのかもしれない。
土方は天上を見上げて、それから視線をゆっくりとまた、その小さな赤いボタンに戻した。
小さな、箱だ。
この中にどんなからくりが仕込まれていれば、人間の人生ひとつをやり直させることが出来るのだろう。
光の速さで何百年も掛かるような距離を、百万の船で渡ってくるような文明だ。そんなことくらいは、当たり間なのかもしれない。
新しい文明や発見は、旧文化に属するものの目からすれば魔法のようなものなのだ。ましてや天人とこの星とでは、数千年に匹敵するほどの文明の差が横たわっている。
きっと彼らには、そんなことも――――できるのだろう。
このボタン一つで、どこまで人生が戻るのかは分からない。だがきっと、これを使えば自分は、やり直せるのだろう。
高杉も桂も銀時も坂本も、誰もいない私宅の一室から、やり直すことが出来るのだろう。
土方は小さく溜息を吐いた。
それはとても、魅力的な方法であるように思えた。

あの日も、道端に転がっている高杉を拾わなければ。
さっさと警察に通報してしまえば、高杉が土方の私宅に住み着くこともなかった。高杉を拾わなければ、それをたしなめにきた桂と交換日記することもなかったし、銀時に襲われることも、坂本と出会うことも無かったのだ。
それなのに、あの時土方は非番だからと気まぐれの言い訳をして、高杉を拾ってしまった。
交換日記だってつき返せばよかったのに、ずるずると続けてしまった。
銀時に圧し掛かられても殴り倒せばよかったのに、そのまま流されてしまった。坂本も追い返せばよかったのに、もてなしてしまった。
その結果が今の状況だ。
四人とそれぞれに関係を重ねて、押し流された上、がんじがらめに利用手足を縛られて袋小路に放り込まれてしまっている。
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