隠れ家

□Doll Pray 5 ヒヨコの憂鬱
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抱きついた後は頬ずりとベタベタとあちこちを触りたくられるのだが、これがどうもこの男のスキンシップであるらしい。
星星を渡ってあちこちの文化に触れているうちにこんなになったのだろう、と頬に鼻先に軽いキスの嵐を浴びながら、土方はその腕に大人しく抱えられていることにするのだ。
坂本辰馬とは、土方が高杉の所に連れて来られてからしばらくして知り合った。
ぽやぽやと船の中を歩いていたら、横合いから飛び出して来たこの男(どうやら陸奥に追い回されていたらしい)にひっ捕まえられてそのまま攫われたのだった。その時もやたらとベタベタあちこちを触れたのだが、直後陸奥と共に探しにやってきた高杉が鬼のような形相で坂本を引っぺがしてがくがくと襟首をゆすぶったのだが、その殺気をばら撒いている高杉にも平気な顔で笑っていたのだから、相当に肝は図太いらしい。

「こっちの生活にはもう慣れたがか?」
「大分な。相変わらず江戸には行かせてくれねェから退屈なんだけどよ」
「あっはっは、おんしが江戸に降りたら迷子になるきぃ、ようよう晋助も行かせられんろう」
「晋助が一緒に来ればいいじゃねェか。あいつだって暇してんだろ」
「あっはっはっは、土方には暇に見えるがか」

土方がちょっと口唇を尖らせて不満を訴えても、坂本は笑い飛ばすだけなのだった。
一応土方は、高杉がテロリストだということをついこの間知ったのだが、あんなにぐうたら自分と一緒にごろごろしている高杉が本当にテロなんて物騒なことをやっているのか、と思う。尤も高杉が土方とひっついているのは、目を離した隙にヒヨコがまた大冒険に出てしまわないか心配で仕方がないからなのだが。
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