+++インソムニア+++
□チアノーゼ
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美しい世界なんてどこにも存在しないということを若いうちに思い知った。
それでもこの男には、少しでも住みよい世界で息をしてほしいと思った。
世界は悪意に満ちていて、そこで呼吸するためにはこちらも強かにのらりくらりと直ぐそこにある命題に気がつかない振りをしなくてはならない。
それでもこの男は馬鹿なほど真っ正直にそれを処理しようとするものだから、もうチアノーゼを起こしているのだ。
+++チアノーゼ+++
騒動がなんだか良く分からないうちに終結したので泊めてもらうことにした。
夜ももう遅かったからだ。走り回って疲れていたし、歩いて家まで帰るのが面倒くさかったのだ。これだけ大きい屋敷なのだから部屋数だって余っているだろう。こっちにはまだ幼い少女がいるんだぞ、夜道を歩かせる気がと屁理屈をこねてみたら、襲われたってやられねぇだろ、といわれた。
至極もっともだと思ったけれど報酬ももらっていないし、追い出されるわけにはいかない。そのまま駄々をこね続けたら諦めたようで、適当に空いている部屋を使えといわれた。
風呂を貸してもらい、浴衣に着替える。
着ていた服はさっさと洗濯機に放り込んだ。誰か洗濯してくれるだろう。あのボディブローいれて気絶させちゃった人の良さそうな人とか。
池があまり汚れていなくて良かったと思う。一張羅だ。