+++インソムニア+++

□夜半過ぎ
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水音が聞こえたんです。

パシャン、って。

最初は静かなもんでしたよ。音が控えめだったから。此処しばらく事件らしい事件も無かったし、みんな暢気に爆睡してました。雑魚寝しているもんだから寝息とかいびきとか酷いですよ。俺もたまたま喉が渇いて、起きなかったら気がつかないままだったかもしれない。

気がついて良かった、って心底思いました。



+++夜半過ぎ+++


耳をそばだてたら聞こえる程度の音が次第に大きくなってきたころに完全に目が覚めたんだと思います。
それまでは夢うつつっていうか、目は覚めててぼんやりと天井みあげてるんだけど、頭は完全に起きてないって言うか。
時計見たらまだ夜中ですよ。
日付は変わってたけど、朝勤でも無かったし大体朝勤だってこんな時間から起きだしたりしません。
だから気になったんでしょうね。この間みたいに怪談騒ぎだったら怖い……そりゃあ怖いですよ。説明できないものは問答無用に怖いでしょう。

ともかく、ウチはこんな組織だし、侵入者でもいたら困るって、その程度の考えだったんですね。

副長なんてあの性格ですから外でも内でも結構命狙われるんですよ。その筆頭はもちろん沖田隊長なんですけれどね。

そんなわけで、俺はもぞもぞ起き上がって雑魚寝の間から脱出したわけです。障子は開いていたんですけど、やっぱり外は気温が違いました。人口密度が高いから余計にそう思うんでしょうね。
とりあえず顔を叩いて眠気を飛ばしてから、刀だけ持って井戸の方に向かいました。蛇口っていう便利なものがありますが、この屋敷結構古いというかボロイんで井戸も掘って有るんですよ。今の季節なんかは重宝します。水が冷たいから、スイカ冷やしたりして。
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