+++インソムニア+++

□何処まで。
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―――言えない。

ぞわり、と背筋を走り抜けた悪寒に土方は口元を押さえた。急激な嘔吐感に喉が痙攣する。そのまま縁側のふちに這うようにしていざり寄って、口の中に二本指を突っ込み奥を引っかいた。

朝無理やり流し込んだかゆは消化されていて、もう胃液しか出てこなかったけれど。

「トシ!?大丈夫か、トシ!」

かたん、と縁に出たときに鳴った音に気付いたのだろう。駆け寄った近藤が背中をさする。

大丈夫だから、という前に喉を焼いた胃液に噎せる。何が大丈夫だというんだ。今現在全く大丈夫じゃない。


言えない。

言えるはずがない。


守りたいと思ったのだ。
居場所を。
今自分が居る世界を。
この関係を。

この腕で守れるなら何を捨ててもいいと思った。
総て持っていかれても笑っていられる覚悟があった。何を捨てても、それだけは守りたいと思ったのだ。

居場所。
理由。

それら総ては真選組に、そして近藤の元にある。それなら価値を見出さなければいいだけのことだ。昨夜のことにも、それ以前のことにも。

自己暗示のように言い聞かせる。

上げた声も。受けた感覚も、全部あちら側においていけばいいのだ。拾い上げなくてもいい。捨ててしまえばいい。

何処まで走れるだろう。行けるところまでだ。そう呟く。

行けるところまで。全部置き去りにしても大切なものさえ守れれば良い。

肩で息をしながら胡乱下に歪む視線を上向ける。屯所の長く伸びた廊下の向こうに沖田が真白い顔で立っているのが見えたような気がした。
朦朧とする意識の下で土方は唇の端を僅かに持ち上げた。

まだ幼い甘さの残るそのおもてが、常になく歪んでいたものだから。

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…うわぁ。私はどこまでひじを苛めれば済むのでしょうか。もっと明るい(?)苛め方がしたい(汗)
この後沖田編(?)となる完結編に続けるつもりですが、その移行にどうしても嘔吐が…(汗)嘔吐が必要だったの…!!
もっとずっと優しい曲なんですが、Coccoさんの「ガーネット」の言葉の一つから……よく曲のイメージ無視しまくってここまでこれるよな、と思いながら書いてました。どこまで走ろうか〜♪
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