+++インソムニア+++

□二重の鎧
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山崎は優秀だった。

いつもはミントンなんてことを仕事中までしているものだからそうとは思えないのだが、動くとなれば話が違う。
行動力・情報収集力、どちらも申し分ない、優秀な監察方だった。
記憶力も相当のもので、だからこそ土方に関係を強要した男たちの情報を引き出すのも早かった。一度調査をして、報告書を提出していたのだから思い出すだけで良いとはいえ、それでも人数が多くなればそれも難しくなろうというものだ。

土方が昨晩出向いた男のことは調査から日にちが経っていないため容易に身元が知れた。
真選組に間接的に関与している上役で、そのくせ「それら」を良く思っていない古参の役人だった。
つまりは先祖の功績に胡坐をかいているつまらない人間というのが沖田の感想だった。確かに由緒ある家系に生まれ代々幕府につかえていることを誇りに思っている人間にしたら昨日今日で参入してきた素性も知れない人斬り集団はさぞかしや野蛮に見えるだろう。

けれどその男の報告からは、その下げずむ対象を、どうにかして自分の手足にして使ってやろうという意図が見え隠れして不快だった。

何故そんな人間にいいように扱われなくてはならない。分かっていて歯がゆく思う。
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