+++インソムニア+++

□ありったけの
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少しの間だけだと言い訳めいたことを思いながら畳の上に仰向けになる。

このところ、あまり眠っていない。
いつものことだ。

この体は睡眠が必要であると言うのにそれを排除しようとしている。生きることまで拒否しないけれど、だんだんゆるやかな螺旋を描きつつあることを知っている。

堕ちていく。
堕ちていく。

どこか否定しきれないのがいけない。まだ生きたいと思うけれどそれは自分としてではない。自由であることはおそろしいことだと、銀色の髪をした男を見て思う。自分はああなれないし、なりたくもない。それは子供っぽい反発を孕んだものだ。憧れるけれど手を伸ばすのが怖い。

あれ自身になれないのであれば憧れる理由も欲する理由もない。
そう知っている。
だから手を伸ばさないし伸ばせない。

あれはこの世で一人きりだ。自分はなれない。束縛されるのが好きな自分はどう足掻いてもなれない。

ただ理由が欲しいのだ。理由が無くては生きて行けない。

ひとつだけに拘束されている。

それは自分を決定付ける重大な要素だ。
そのためだけに生きられればいい。
そのためだけに死ねればいい。
そのためだけに生きたい。
そのためだけに死にたい。

他の要素はいらないと宣言できればいい。

うつらうつらと下がる瞼が視界を閉ざす。
真っ暗だ。
もう怖くない。
死ぬ瞬間はどんな色を孕むのだろう。
俺はどこか死というものを美化しているような気がする。
けれどきっと死は解放だ。束縛されたいのに自由になりたい相反する感情の一方が待ち望んだ。何も考えなくてもいいなんて思っただけで。
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