+++インソムニア+++

□流れゆくもの−過去編−
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だから実際こういうことは良くあるのだ。
最初は土方自身にそれとなく持ちかけてきたのだが、土方は上を通さないと話は出来ないとにべもなく突っぱねていた。
これは失敗だった、と土方は直ぐに思い知る。
人の好い近藤が土方君のためだよと口の上手い官僚連中に持ちかけられて悩まないはずがなかったし、本当に土方のためになるのだったらと妙に思いつめられたらたまらない。

松平にまで声をかけられたこともある。
直属の上司であるし、自分たちを拾ってくれた恩人でもあるからあの時ばかり断るも大変だった。
率直に話をして何とか事なきを得たけれど、それで納得してくれるような人間ばかりでもない。

近藤になんだかんだと心配されつつも断り続けているうちに、今度は直に迎えが来るようになってしまった、というわけだ。

+++

車が止まったのは、いかにも高級そうな料亭だった。

繁華街にはあるものの、何本も通りを奥に入った場所にあるから酷く静かだ。
一見さんは当然お断り、一般人なら一生足を踏み入れることは無いかもしれない。

元々一般人の土方は憮然とした。

あからさまに威圧的な門構えだとかではないのだけれど、こういう場所にはどうも慣れない。

玄関に入った途端女将がいらっしゃいまし、と三つ指をついて待っている。長谷川さまがお待ちになっております、と言われ、とりあえず相手が地球人だったことに土方は多少安堵した。天人なんてマトモに言葉も通じないのも居る。両方の意味で。

長谷川のことは良く知っている。

入国管理局の局長で、その立場柄要人警護も引き受けている真選組とはそこそこ接触もある。
威圧的な天人を相手に苦労しているのはどちらも同じだ。近藤とは何回か呑みに行ったこともあるらしいが、立場上はずっと長谷川の方が上だ。
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