+++インソムニア+++

□流れゆくもの -現在編-
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それから長谷川の行く末について、土方が耳にする機会は無かった。
土方自身忙しくなってしまったというのもある。
HOTEL IKEDAYAのテロリスト捕縛劇があったり、そこで出会った銀髪の侍と真剣でやりあったり、祭に乗じて将軍殺害(あれは暗殺とはいえまい)を狙った事件の後始末に奔走したりで忙殺され、長谷川のことを思い出すこともなくなっていた。

日常は飽和状態で。

何か他の要素が入り込んでこようものなら、張り詰めていた糸がぶつりと切れて、使い物にならなくなるような気がしたから、故意に何も考えないようにしていた。


―――再会した場所は、思いも寄らない場所だった。


土方は家を一軒持っていて、屯所から週に数回はそちらに戻る。
屯所だけでも生活に支障は出ないのだが、大所帯を事実上総括しているくせに人が多い場所にはどうしても慣れることのできない土方にとって、屯所は最良の住居とはいいがたい。
休憩所という名目だが女を住まわせる気も無いものだから自然と自炊をすることになる。道場時代から家事には慣れているから苦にはならないし、例のマヨネーズについて屯所のように食事のたびに視覚的テロだと文句を言われることも無い。

他人とはどうもそういう部分が違うということを土方自身よく知っているので、自分の味覚で味付けのできる自炊は土方にとって気楽なものであった。
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