+++インソムニア+++

□羽化の刻限
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男同士なのだ。今は色々と警戒されて一緒に入浴は出来ないが、少し前までは背中を流してもらったし流しても居た。だから彼の肩甲骨の美しい左右対称の具合も勿論知っている。
肉付きが悪いのは食べても食べても太らない、女が聞いたら羨ましがるような体質と生来の偏食のせいで。
その肌が抜けるように白いのは、日焼けする前に火傷してしまう肌質と、外を長時間回ることがなくなったから。
実は女にもてて逆に不自由するくせに、女という生き物にどこか恐怖に近いものを覚えていることも沖田は知っている。
それは子供故の好奇心から発露するものであって、また子供ゆえに沖田は何故自分が土方にだけ、そんな収集癖を覚えるのかということを考えようともしなかった。

よくよく考えてみれば―――――それは所有欲ととても近い場所にあるものだったのだ。
とにかく幼いころの沖田が土方を自分のものなのだと、そう無意識に思っていたのは確かなのである。

観察だけではすまなくなったのは少年期の中ごろだった。
彼の内側はひそりと外側からは巧妙に隠され隔離されていて、こじ開けようとする度にますます頑なになっていく。そのころは道場の経済状況はどん底で、土方は昔のようには笑わなくなった。
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