+++インソムニア+++

□禁じられた遊び
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いつだって土方は、自分を子供扱いした。
幼い頃からずっとそれが、沖田には悔しかった。


+++禁じられた遊び+++ 


当然といえば当然の話だ。土方は沖田より八つほども年上で、ずっと早くから世間に出ていた。加えて沖田はあまり丈夫な子供でもなく、年の頃よりずっと小さく見えたから土方にしてみればほんの小さな子供にしか見えなかっただろう。
八つも年が違えば育つ環境も体格も違う。土方だって近藤のように特別健康なわけではなかたけれど、身長は人並み以上にあったから、沖田とはものを見る視点も違った。
沖田が剣道をやるようになっても土方はいつまでも沖田を子供扱いした。沖田には剣の才能があったし努力も周りが思っているよりはずっとしたから、いつしか土方より強くなっていたけれど、それでも土方の子供扱いはまったく変わらなかった。
尤もそれは近藤だって同じだったのに何故土方ばかりが気に障って仕方がなかったのか、沖田には分からない。ただ頭を撫でられると反射的にその手を払ってしまうのも、その後やれやれという顔をする男がひどく憎かったのも、ずっと土方一人に対して覚えていた感情だった。

あんまり沖田がそうするものだから、近藤までが土方自分の関係を気にしだしたのも腹が立つ。

「総悟、あのな、トシが気にしてたぞ。あいつは平気そうな顔をしてても、全部飲み込んじまってるからよ…」
「そんなの知りやせん」

憮然と言った沖田に近藤は苦笑していた。
わざわざ人伝にそう言って寄越す土方も、知った顔をして自分のことのように土方の性質をあらわしてのける近藤までもが憎らしくなって、ますます沖田はそっぽを向いた。
あのプライドの高い土方がこんなことを近藤にだって相談するとは思えなかったけれど、幼い沖田には近藤が心配しただけとは素直に受け取ることはできなかったのである。

近藤にまでそんなことを言われるだなんて、何故土方のせいで自分がこんな惨めな思いをしなくてはならないのか。

幼い胸が思い悩んだのは、恋を知らないせいだった。
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