+++アンニュイ+++
□公正なる審判者
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土方は猫を一匹飼っている。
黒い皮に金の目をした猫である。容姿は綺麗な分類に入るのだろうが、番犬にもならないし如何せん人にあまり懐かない。人間の膝に進んで乗るような性質でもない。
元々半野良だったのがエサをやるうちに住み着いてしまったものだから、過剰に触れてくる手には今も警戒しているのだろう。エサをやる家主には足下にすりついて甘え声で鳴きもするが、それ以外の人間には驚くほど冷たい。
あの沖田にも爪を立てたことがあるのだから、野生の危機管理能力というものははずれが無いのだろう、そんなふうに土方は思う。
+++公正なる審判者+++
珍しく仕事が速く片付いて、定時にもならないうちに自宅に戻った土方は居間で妙なものを目撃することになる。
「ほーら、クロおいで〜」
妙に真剣な目をした銀時が差し出しているのはカツオブシ(お徳用)。
「クロなどという見た飯の名前を土方がつけるはずがあるまい。いい子だからこっちにおいで、アレクサンダー」
少なくともクロよりはつける確立が低いだろう名前で呼びつつチクワを取り出すのは桂である。
「……」
無言で高杉が懐から取り出したのは、カニカンだった。