+++アンニュイ+++

□橋の上でする恋
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目的地はない。

ただ暇に耐えがたかった。
表通りを歩くと天人の匂いが移るような気がして気分が悪い。
日の出ているうちにうろつけるような身ではないというのもあるが、昼の鮮烈な視界はくっきりとしすぎていて、この体の内にあるものすら明確に浮き彫りにしてしまう。そんな気がする。

この身の奥で未だ丸まり時を見定めようとしている黒い獣の存在を引きずり出し教え込もうとする。
そんなもの自分はとっくの昔に知っているというのに。


+++橋の上でする恋+++


目深に編み笠を被って道を歩く。

元々桂のように逃げまわるのは得手でないけれど、隠れまわるのも得意ではない。その桂も隠れているようには思えないから、きっと似た物同士なのだろう。
自分と一緒だなんていったら生真面目な桂は憤慨するだろうか。隠れ家の手配を任せたりして、一応恩に着ていることは着ているのだが、きっと本人には伝わっていないのだろう。当然だ、伝える努力もしていないから。

その桂は高杉が土方と接触を続けていることを快く思っていない。

これもまた当然だ。
どこの世界に自分の仲間を現在進行形で斬り殺している組織の、しかもナンバーツーと懇ろになる人間が居るというのだ。

…ここに、いるのだけれど。
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