+++アンニュイ+++
□にがつみっか、せつぶん。
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+++にがつみっか、せつぶん。+++
スーパーにに来るのは久しぶりだ。
家事などほとんどできないし、また最近では必要もなくなってきたせいである。何故だかこのごろ家事の腕を上げた新八が炊事もやってしまうし、土方の家に行けばなんだかんだ言って食事くらいは出してくれる。
ますます生活無能者になっていく銀時ではあるが、本人に罪悪感も危機感もないのだから改善の余地は無い。
その銀時が立ち止まっている場所。
何故かスーパーの、惣菜コーナーだった。
「……やっぱこれは外せねェな」
にやりと笑って呟くと、甘味の入った籠の上にとさりと売り場に山積みになったものを放り込む。
鼻歌でも歌いだしそうなほど上機嫌で、いそいそとレジに向かう銀時の後姿からは妖しいオーラが滲み出していた。
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「おーおぐーしくーん。あーそーぼー」
いまどき子供でもいわないような台詞を吐いて通いなれた玄関を叩くと、しばらくして静かな足音が近付いてくる。
ガラリと曇り硝子の戸が開かれると、今日は仕事が早く終わったのか、定時を回って一時間ほどしか経っていないのに普段着姿の土方が出てきた。
土方の家は職場である屯所から五分と離れていないのだが、普段から多忙なせいでこまめに帰ってくるとはいえ、帰宅は午後十時を過ぎることも珍しくは無い。
「や、銀さん晩御飯のご相伴にまいりました!」
「……餓鬼共はどうしたよ」
態度のおかしい銀時には既に突っ込む気も失せたらしい土方は一つ溜息をついて銀時の後ろを覗き込む。
今日は新八の家に行くって、といったら今日もだろ、と厳しい突っ込みが返ってきた。だってこんなの新八に見せられない。ただでさえ最近挙動が可笑しいのだ、うっかり思春期の少年が土方の魔力に転ばないとも限らない。
既に思慮分別あるはず大人が四人も転んでいるのである。
叩けばまだまだ埃が出てくる。確実に。